第140回 ヨーロッパ音楽都市巡り パリ その9 シャンゼリゼ劇場(Théâtre des Champs-Élysées)

第140回 ヨーロッパ音楽都市巡り パリ その9 シャンゼリゼ劇場(Théâtre des Champs-Élysées)

2023年02月07日(火)11:00 AM

 劇場の最後にシャンゼリゼ劇場をご案内しましょう。シャンゼリゼ劇場と言っても実際にはシャンゼリゼ通りにあるわけではなく、8区のモンテーニュ通りにあります。すぐ近くに最高級ホテルの1つプラザ・アテネ―などもあるブティックやカフェが建ち並ぶ優雅な通りです。

シャンゼリゼ劇場入口



 この劇場は1913年に開場した1,900席のアールデコ様式の建物ですが、こけら落しで大事件が起きたことで広く知られています。シャンゼリゼ劇場は。シャトレ座の回でも紹介しましたが、バレエ・リュスというディアギレフが主宰してパリで活躍したロシア・バレエ団にこけら落とし公演を依頼しました。

 

 1913年5月13日にクロード・ドビュッシー(1862-1918)のバレエ音楽「遊戯」が上演されましたが、あまり評判は良くなかったようで、その後長い間歴史から消えていた曲でした。

 

 その2週間後の5月29日に初演されたのが、イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)の代表作「春の祭典」だったのです。まだ若く無名だったストラヴィンスキーですが、バレエ・リュスから作曲依頼を受け、1910年にオペラ座で「火の鳥」、1911年シャトレ座で「ペトルーシュカ」が大成功を収めていました。しかし、その前衛的な音楽から賛否両論があり、5月29日の初演は開演前から賛成派と反対派が揉めていたのです。

 

 「春の祭典」は、ストラヴィンスキーの不安定なリズムと不協和音による音楽だけでなく、ニジンスキー(1890-1950)の前衛的なダンスもあって、反対派が暴れ出し、第1部の終了時には約40名が逮捕されました。しかし、そのまま公演は続けられて最後にはカーテンコールが巻き起こったと伝えられています。

 

 当日客席にいたサン=サーンス(1898-1935)やプッチーニ(1958-1924)らはストラヴィンスキーの音楽を酷評しましたが、現在では20世紀を代表する偉大な作品という評価を得ています。

シャンゼリゼ劇場外観



 さて現代のシャンゼリゼ劇場ですが、オケピットが小さいこともあって、オペラはバロックの小さな編成によるオペラが定期的に上演されていますが、100年前の雰囲気が良く分かる優雅な劇場の佇まいが残っています。。

 

執筆:上月 光



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