第133回 ヨーロッパ音楽都市巡り パリ その2 オペラ座1
オペラ座。そう名前だけでパリの国立オペラ座、ガルニエ宮を指すほど世界的に重要なオペラハウスです。モンテカルロ歌劇場編でも登場しましたが、希代の建築家シャルル・ガルニエ(1825-1898)が建てた劇場です。

ガルニエ宮正面
パリの国立オペラの歴史は1669年に遡ります。ブルボン王朝の君主で、太陽王と呼ばれたルイ14世(1638-1715)が国立音楽アカデミーを設立、統治者や場所は変わっても、フランスのオペラや作曲も上演もすべて王室が支配していました。フランス・オペラの歴史は後述します。
さて、現在のオペラ座、ガルニエ宮ですが、歴史は意外に新しく、1860年、ボナパルトの甥、ナポレオン3世(1808-1873)の時代に建築計画が始まりました。ガルニエの案が採択され、1862年着工しましたが、湿地帯に位置していたため、工事は難航し、地下水を排出させるだけで7カ月もかかってしまい、地底湖の上に建設されたという噂までありました。

ガルニエ宮シャガールの天井画と有名なシャンデリア
そのような事情にインスピレーションを得て、ガストン・ルルー(1868-1927)によって1910年に書かれたのが、かの有名な「オペラ座の怪人」です。数多くの映画やドラマにもなりましたが、1986年アンドルー・ロイド・ウェーバー(1948)によって大ヒットのミュージカルとなりました。
オペラ座の工事の最中、北ドイツのプロイセン王国と普仏戦争(1870-1871)が起き、フランスは敗れて、ナポレオン3世は降伏し、パリも落城しますが、新政府によってガルニエ宮の工事は再開され、1875年1月についに開場しました。

オペラ座の怪人が住んでいた地下(笑)
その時上演されたのが、フランソワ・オベール(1782-1871)の「ポルティチの物言わぬ娘」(1828年初演)、ジョアッキーノ・ロッシーニ(1792-1868)の「ギョーム・テル」(ウィリアム・テル)(1829年初演)、ジャック・アレヴィ(1799-1862)の「ユダヤの女」(1835年初演)、ジャコモ・マイアベーア(1791-1864)の「ユグノー教徒」(1836年初演)等、錚々たるグランド・オペラの名作の数々でした。
執筆:上月 光
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