第122回 ヨーロッパ音楽都市巡り ハイデルベルク その7 三木稔3
三木稔先生(1930-2011)の日本史連作オペラの続きですが、次は第7作の「源氏物語」です。

愛怨リハーサル風景
原作はもちろん紫式部の名作「源氏物語」ですので、舞台は10世紀の平安時代です。3作目の「じょうるり」以来の盟友、セントルイス・オペラの芸術監督のコリン・グレアムの英語の台本によって、2000年にセントルイスで初演され、空前の大成功を収めました。翌2001年には日生劇場がセントルイス・オペラを招聘し、外国人による英語の「源氏物語」が日本で初演されました。ここに至るまでの過程は”オペラ「源氏物語」ができるまで”という三木先生の著書に詳しく書かれています。中央アート出版社という会社です。Amazonでも買えるようです。
http://www.chuoart.co.jp/book/b7655.html
一方、生前三木先生が熱望していた日本人による日本語の「源氏物語」は、なかなか実現されませんでした。しかし、いよいよ日本オペラ協会(藤原歌劇団)によって、来年(2023年)の2月に日本語上演を渋谷のオーチャードで初演されるようです。キャストも藤原歌劇団のスターたちによる豪華なものです。きっと三木先生も草葉の陰からさぞ喜んでいらっしゃることでしょう。私もぜひ観に行こうと思っています。
https://www.jof.or.jp/performance/nrml/2302_genjimonogatari.html

三木先生(左から2番目)レクチャー風景
「源氏物語」と言えば、今放映中の小栗旬の「鎌倉殿の13人」に続き、来年は松本潤の「とうする家康」、そして再来年の2024年が、紫式部が主役の「光る君へ」と聞いています。紫式部役は吉高由里子だそうです。
https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=34215
誰からも頼まれてもいないのに、本やオペラやドラマの宣伝をしてしまいました(笑)。
さて話を「源氏物語」に戻します。ストーリーはあまりに有名な作品なのでここでは省きますが、光源氏はもちろんのこと、桐壺帝も藤壺も紫上も葵上も六条もみんな出てきます。世界初演で美術と衣装を担当したのは朝倉摂さんでしたが、豪華絢爛な舞台はグランドオペラの名に恥じない作品となりました。
また、この作品で大切なのが、琵琶と新箏(二十絃)です。特に天才琵琶奏者、シズカ楊静(ヤンジン)は、「琵琶協奏曲」のソリストを始め、三木作品には欠かせない存在でした。
彼女の琵琶は、次作の「愛怨」でも非常に重要な役割を果たしています。
執筆:上月 光