第89回 ヨーロッパ音楽都市巡り 「ドレスデン」その2 アルテ・マイスター絵画館

第89回 ヨーロッパ音楽都市巡り 「ドレスデン」その2 アルテ・マイスター絵画館

2022年01月18日(火)11:00 AM


 アウグスト1世によって18世紀始めに建てられたツヴィンガー宮殿は、4つの美術館や博物館、美しい庭園の中庭を持っています。その中でも重要なのがアルテ・マイスター絵画館です。建築、美術、音楽のパトロンだったアウグスト1世を始めとするザクセン選帝侯たちによって収集された膨大なコレクションは見事です。特にルネッサンス、バロック期のイタリア絵画、フランドル絵画は必見です。

ツヴィンガー宮殿王冠の門



 その中でも特に有名なのがラファエロ(1483-1520)の「システィーナの聖母」です。1514年にラファエロが描いた祭壇画で、ラファエロが最後に描いた聖母マリアで、自身だけで書いた最後の絵画と言われています。1754年にザクセン選帝侯が手に入れましたが、その後ドイツの文化人たちにも大きな影響を与えました。

アルテ・マイスター絵画館



 第2次世界大戦の爆撃で、防空壕に避難させたおかげで焼失の難を逃れましたが、ソ連兵によって発見され、モスクワに持っていかれました。そして、1946年からプーシキン美術館に展示されていました。しかし、ヨシフ・スターリン(1878-1953)の死後、1955年にソ連と東ドイツの友情の証に、ということでドレスデンに戻されたのです。

システィーナの聖母



 この絵画の構図ですが、2人の聖人を両脇にして、聖母マリアがキリストを抱きかかえて雲の上に立っています。普通は柔らかい微笑みをたたえているマリアが、この絵では厳しい顔をしていて、赤ん坊のキリストの顔も厳しいですが、もともとの祭壇画では中央にキリスト磔刑画が描かれていたため、と言われています。また、緑のカーテンの陰には無数の天使の顔が浮かんでいますが、この顔にも表情がなく、なかなか怖いものがあります。


 さて、このマリア様以上に有名なのが、この画の下部に描かれている2人の天使です。物欲しげな顔をした天使は、世界一有名な天使と言われ、この2人だけが切り取られてあらゆるところに使われてきました。ドレスデン市もこの2人の天使を市のシンボルのように使ってきたのです。皆さんもどこかで見たことがあるのではないでしょうか?
 身近なところでは、イタリアンレストラン、サイゼリヤの壁画にも使われています。


執筆:上月 光

 



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