第88回 ヨーロッパ音楽都市巡り 「ドレスデン」その1 歴史と街並み
「エルベのフィレンツェ」とも呼ばれる優雅な文化都市ドレスデンは、ドイツ中部の東端に位置し、チェコの国境近くにあります。エルベ川はポーランド、チェコからドイツ北部ハンブルクから北海に抜ける川ですが、ドレスデンの街中を流れ、ドイツ東部の重要な交通路となっています。

ブリュールのテラスという遊歩道からエルベ川を望む
15世紀末、ザクセン選帝侯アルブレヒトによって街づくりが始まり、16世紀中旬モーリッツが選帝侯の頃に発展していき、18世紀始めの強王と呼ばれたアウグスト1世の時にツヴィンガー宮殿を建設する等、最大の繁栄を見せます。19世紀始めに神聖ローマ帝国が解体されるとザクセン王国となり、ドレスデンが首都となります。
第2次世界大戦末期にドレスデン爆撃と言われる連合軍の集中的な爆撃を受けて、実に市街地の85%が破壊されてしまいました。終戦後はロシアの占領下で東ドイツに入りましたが、工業都市として復興を遂げ、東西ドイツ統一後も旧東ドイツ有数の観光都市として、賑わいを見せています。
ドレスデン城
ザクセン選帝侯の居城だったらドレスデン城は、爆撃で壊滅しましたが、ネオルネッサンス様式のもとの重厚感のある姿を見せています。また城の城壁に描かれている壁画「君主の行列」は、奇跡的に爆撃を免れました。ドレスデン近郊の有名な陶磁器の街マイセンで造られたマイセンのタイルで造られている素晴らしいものです。

君主の行列
ドレスデン城に隣接した三位一体大聖堂とも呼ばれるカトリック旧宮廷教会は、ドレスデン最大の教会で、バロック様式の壮大な建造物です。中には壮麗なパイプオルガンを持っています。

旧宮廷教会とドレスデン城
18世紀に建てられたバロック様式によるプロテスタントの聖母教会(フランウエン教会)。爆撃で破壊されましたが、東西ドイツ統一後、世界中から寄付を集め、2005年に再建され和解と希望のシンボルとなりました。再建にあたって瓦礫の中から丁寧に石を集め、もとあった場所に埋めていく形で利用されたのです。古い石は黒く変色しているので、「世界最大のジグソーパズル」とも呼ばれた再建となりました。

聖母教会
ツヴィンガー宮殿とアルテ・マイスター絵画館は、来週詳しくご案内します。
ドレスデンの旧市街に見どころはたくさんありますが、すべて徒歩で回れる旧市街に集中していますので、半日もあれば十分に回ることが出来るのもありがたいです。
執筆:上月 光