第74回ヨーロッパ音楽都市巡り ベルリン5(ベルリン・コーミッシェ・オパー)
ベルリン3つ目のオペラハウスは、コーミッシェ・オパーです。最大の特徴は、ウィーンのフォルクスオパーなどと同じく、イタリアやフランスの作品もすべてドイツ語で上演をすることです。しかし、フォルクスオパーとは違い、決してオペレッタやミュージカルがレパートリーの中心というわけではなく、前衛的な現代の作品も多く扱います。

コーミッシェ・オパー外観 ⒸGunner Geller
コーミッシェ・オパーの前身クロル劇場は、オペレッタ劇場を建て替えて1924年に開場しました。1930年代にはナチスに左翼思想に目を付けられて閉鎖され、ナチスの思想に順応させられました。戦後は東ドイツ側の劇場として、1947年演出家のヴァルター・フェルゼンシュタイン(1901-1975)によって設立されました。フェルゼンシュタインは芸術総監督として死去するまで活躍し、ヨアヒム・ヘルツ(1924-2010)、ゲッツ・フリードリヒ(1930-2000)、ハリー・クプファー(1935-2019)ら優れた演出家たちを輩出しました。さらにその教えを引き継いだアンドレアス・ホモキ(1960-)は、2003年から芸術総監督となりました。

コーミッシェ・オパー内部 ⒸGunner Geller
指揮者としてはヴァーツラフ・ノイマン(1920-1995)やクルト・マズア(1927-2015)ら主に東側の指揮者が活躍し、2002年からはキリル・ペトレンコ(1972-)、2018年からは若きラトヴィア人のアイナルス・ルビキスが音楽総監督を務めています。
1990年代には3回に渡り来日公演を行い、阪哲朗が第1指揮者を務めていたこともあります。
さて、壁が崩壊して以来、独立したオペラハウスが3つも必要ないのでは?という世論が起こり、いつも真っ先にコーミッシェ・オパーが国立歌劇場と合併する等の噂がありました。しかし結局は、文化芸術に手厚いドイツのこと、新しくオペラ・ベルリン財団が創設され財団が5つの団体を管理することになりました。
5つの団体とは、3つのオペラハウス、国立バレエ団、舞台総合サービスです。バレエ団と舞台を統合組織することによって、予算の削減を計り、3つのオペラハウスを守りました。
執筆:上月光
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