第63回 ヨーロッパ音楽都市巡り イタリア番外編6 「トリエステ」
イタリアの小ウィーンとも呼ばれるトリエステは、イタリア北部東端のフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の首都で、アドリア海に面したスロベニアとの国境の街です。
紀元前3,000年の昔より交通の要衝として栄えた町ですが、古代ローマ帝国でも重要な軍事都市でした。中世から第1次世界大戦までヴェネツィア共和国に対抗し、ハプスブルク帝国に支配されていたため、現在でも、とてもウィーンの香りがする街並みを持っています。老舗エスプレッソメーカーのイリー(illy)の本社があるのもトリエステで、ウィーン同様、カフェの街と言われています。
第1次世界大戦後、ハプスブルク帝国は滅び、トリエステはイタリアに併合されました。第2次世界大戦後、トリエステの街は、イタリアとユーゴスラヴィアの奪い合いとなって、南北の冷戦状態となりました。さらにはユーゴスラヴィアの崩壊によって南トリエステは、さらにスロベニアとクロアチアに分割されました。今はイタリアもスロベニアもクロアチアもシェンゲン条約国となり、南北とも昔のようにトリエステ経済圏となっています。
街のシンボルは、眼下にアドリア海を望む美しいミラマーレ城で、19世紀にハプスブルク家のマクシミリアーノ1世によって建てられ、白亜の城と呼ばれています。

白亜のミラマーレ城
街の中心はイタリア統一広場で、市庁舎や州庁舎等、重要な建物に囲まれ、さまざまなイベント広場としても使われています。

イタリア統一広場 正面は市庁舎
もちろんオペラハウスもあります。トリエステ・ヴェルディ劇場(Teatro Verdi Trieste)という名前で、ハプスブルク家によって1801年に建てられました。ジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)中期の作品「海賊」(1848年)、「スティッフェーリオ」(1850年)が初演された劇場でもあったので、1901年のヴェルディ没後すぐに、劇場名を今の名前に変えました。

ヴェルディ劇場 ファザードはスカラ座そっくりです
ファザードはスカラ座を参考にして作られたので、そっくりです。中は小ぶりながら絢爛豪華な馬蹄形で美しい劇場です。

客席 3層のパルコと2層のガレリア
執筆:上月光
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