第57回「パレルモ」その3 マッシモ劇場 ゴッドファーザー
第57回 ヨーロッパ音楽都市巡り 「パレルモ」 その3
マッシモ劇場 ゴッドファーザー
パレルモのオペラハウスはマッシモ劇場です。イタリア語でMassimoというのは英語のMaximumと同意で、最大ということです。敷地面積は、パリ・オペラ座、ウィーン国立歌劇場に続き、ヨーロッパで3番目に大きく、大きいながら音響は素晴らしく、イタリアを代表する歌劇場です。

マッシモ劇場外観
マッシモ劇場は、30年以上かけた大工事ののち、1897年5月16日にヴェルディ(1813-1901)の最後の作品「ファルスタッフ」で南イタリア最大のオペラハウスとして大々的に開場しました。同年同月には大テノール、エンリコ・カルーソーがポンキエッリ(1834-1886)の代表作「ジョコンダ」を歌いました。特に新人の発掘には定評があり、多くの有望な歌手、指揮者たちがマッシモ劇場から巣立っていきました。しかし、老朽化が進んだため1974年に改装工事に入り、その後はすぐ近くのポリテアーマ劇場(1874年開場)にて公演が行なわれてきました。1988年にはオープンする予定でしたが、例によって工事が遅々として進まず、結局100周年の1997年にも間に合いませんでした。

ポリテアーマ劇場
1998年4月22日、ようやく再開場しましたが、実際には至るところが工事中のまま、無理やりの開場でした。演目は、ヴェルディのアイーダで、指揮はカンポーリ、アイーダはノルマ・ファンティーニ。そして、ラダメスはパヴァロッティの予定でしたが例によってキャンセルになり、ホセ・クーラが歌いました。
劇場入口の手前左右にライオンの銅像が鎮座し、そこから30段ほどの階段を上がったところにギリシャ神殿コリントス式、やや中膨れになった大石柱(サゴーマ)が立ち並び、荘厳な雰囲気で我々を出迎えてくれます。この配置は、ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場の正面ととてもよく似た感じです。しかし一歩中に入れば、オープンスペースはとてもゆったりとして、近代的で美しく、贅沢な空間です。プラテア(平土間)の上に5層のパルコ(ボックス席)、その上に1層のガレリア(天井桟敷)という堂々とした馬蹄形の作りです。ワインレッドの座席に、壁はすべて金箔で、たいへんな美しさです。また、天井には大きな円形の美しいフレスコ画が金箔に映えています。また、劇場内のギフト・ショップもプログラムのバックナンバーやいろいろな小物が売っていて休憩中に楽しめます。巨大な空間に関わらず、座席数は1,316席しかなく、世界一贅沢な劇場かも知れません。

マッシモ劇場正面階段

マッシモ劇場正面脇のライオンのブロンズ

マッシモ劇場客席とステージ

マッシモ劇場客席

マッシモ劇場天井画
最後に久々に映画の話を。「ゴッドファーザー」はマフィア映画の最高峰ですが、シリーズ最終作の「ゴッドファーザーPart3」は、単なるマフィア映画ではなく、ヴァチカンの実話スキャンダルがテーマとなっています。この映画のクライマックスはオペラハウスでの銃撃戦のシーンですが、この舞台がマッシモ劇場なのです。1990年封切りなので、再開場前のマッシモ劇場を見ることができます。映画はオペラの上演と並行して進行しますが、このオペラが先週も申し上げたシチリアが舞台の「カヴァレリア・ルスティカーナ」です。そしてその間奏曲が実に印象的に使われます。
執筆:上月光
« 半﨑美子&小原孝スペシャルコンサート@TokyoArakawa 東京公演 | 第58回 ヨーロッパ音楽都市巡り イタリア番外編「アッシジ」 »