第56回「パレルモ」その2 「シチリア島の夕べの祈り」「カヴァレリア・ルスティカーナ」
第56回 ヨーロッパ音楽都市巡り 「パレルモ」 その2
「シチリア島の夕べの祈り」「カヴァレリア・ルスティカーナ」
パレルモが舞台のオペラといえば、ヴェルディの「シチリア島の夕べの祈り(シチリアの晩鐘)」です。そして、パレルモではありませんが、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」もシチリアの田舎が舞台の作品として有名です。

パレルモの港

旧市街の中心クアトロ・カンティ 文字通り4つの角という意味です
ヴェルディ(1813-1901)は、中期傑作3部作と呼ばれる「リゴレット」「イル・トロヴァトーレ」「椿姫」の次の作品として「シチリア島の夕べの祈り」を書きますが、これは1855年の第1回パリ万博のために委嘱されたフランス風グランド・オペラの作品でした。全5幕で3時間を超えるため、あまりメジャーな作品にはなりませんでしたが、序曲といくつかのアリアは非常に有名です。特に序曲はオーケストラの演奏会でたびたび独立して演奏され、特にリッカルド・ムーティは来日のたびにこれを演奏しています。
さてこの作品ですが、実話に基づいた作品です。先週のパレルモの歴史の際にも少し触れましたが、時は1282年3月30日復活祭の月曜日。フランスの軍人たちに攫われたシチリア人の若い娘の復讐のため、夕方の教会の鐘の音を合図に一斉蜂起したという話です。実際にパレルモにいたほとんどのフランス人が虐殺されてしまいました。オペラでは主人公の2人の結婚式を絡めて、一斉に鐘が鳴りだしたところで幕となります。
もう1つシチリア島舞台の有名なオペラといえば、ピエトロ・マスカーニ(1863-1945)の「カヴァレリア・ルスティカーナ」です。イタリア語で「田舎の騎士道」という意味ですが、シチリア島の山間の田舎が舞台となっています。この作品は、1890年出版社ソンゾーニョ社の1幕オペラコンクールで優勝し、大成功を収めました。このオペラで特に有名なのは、間奏曲で、普通のコンサートでも単独で頻繁に演奏され大変美しい曲です。
またこの作品は、ヴェリズモ・オペラと先駆的なオペラとなり、イタリアで大流行しました。日本語では現実主義と言われますが、貴族や王様が主人公ではなく、市井の人々の日常を描き、殺人が起こり、音楽的には劇的で重厚な特徴があります。他にはレオンカヴァッロ(1857-1919)の「道化師(パリアッチ)」、プッチーニの「トスカ」や「外套」、ジョルダーノ(1867-1948)の「アンドレア・シェニエ」などが代表的なヴェリズモ・オペラです。
執筆:上月光
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