第54回「ヴィチェンツァ」 パッラーディオの街ヴィチェンツァ
第54回 ヨーロッパ音楽都市巡り 「ヴィチェンツァ」
パッラーディオの街ヴィチェンツァ
この街も紀元前から栄えた古い歴史を持つ街で、東西がヴェネツィアとヴェローナという強国に挟まれていましたが、中世のヴェネツィア支配の時代には芸術が大いに栄えました。特に16世紀は前回のパドヴァで触れたように偉大な建築家アンドレア・パッラーディオ(1508-1580)が数多くの建築物を造りました。そして、その街並みが世界遺産となっています。
パッラーディオは、後期ルネッサンスを代表する偉大な建築家ですが、芸術家と言うよりも、初めての職業建築家と言われています。特にヴィチェンツァに残っている彼の造った別荘群は保存修復され、今も500年前の姿を見せています。
古代ローマの神殿建築を元にした対称性や奥行き、価値観に基づいた様式は、パッラーディオ様式と呼ばれて18世紀末までヨーロッパで発展し続けました。

ヴィチェンツァの美しい街並み
残っている美しい中世の街並みの中でも特筆すべきは、オリンピコ劇場です。この劇場は13世紀に建てられた城の中庭にありますが、1580年に前述のパッラーディオが古代ローマの劇場を模して屋内に劇場を作り始めました。パッラーディオは数か月後に死去してしまいますが、息子たちによって引き継がれ、世界初の屋内劇場として1585年に完成しました。
舞台の背景は、凱旋門風の列柱と彫像をはめ込んだ壁で作られてます。その背後には古代ギリシアの街路を再現した風景が広がって、オペラの舞台のような奥行きを感じさせます。
かつてロイヤルチェンバーオーケストラの演奏旅行でこの劇場で演奏をしましたが、過去にタイムスリップしたような不思議な感覚を憶えています。そして上演中も消防車が劇場裏に待機にして、世界遺産で演奏することの素晴らしさ感じました。

オリンピコ劇場のロイヤルチェンバーオーケストラ舞台
執筆:上月光
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