第47回「ジェノヴァ」 リヴィエラ海岸の港町ジェノヴァ

第47回「ジェノヴァ」 リヴィエラ海岸の港町ジェノヴァ

2021年03月22日(月)9:30 AM

第47回 ヨーロッパ音楽都市巡り 「ジェノヴァ」
リヴィエラ海岸の港町ジェノヴァ

 

 海洋都市のジェノヴァですが、金融の盛んな街としても有名です。北西イタリアのリグリア州の州都で、西はフランスとの国境があり、ミラノ、トリノという大都市も近いことから、中世から地中海有数の港を持つジェノヴァ共和国として栄えました。

 

12世紀にはすでに海洋国家として強力な力を持ち、もう1つの海洋共和国ヴェネツィアと地中海貿易の独占権を争ってきました。16世紀には祖国の父と言われる提督アンドレア・ドリアによって最盛期を迎えますが、 ちょうどそのころに生まれたのが、アメリカ大陸発見のクリストファー・コロンブス(1451-1506)です。イタリア語ではクリストフォロ・コロンボといいます。なお、ジェノヴァはもちろんイタリア語ですが、英語では、ジェノア(Genoa)と言います。

 

コロンブスの生家

 

街全体は、山と海の間に海岸線に沿って細長く伸び、山の斜面に向かって階段状に広がります。山と平地とは、数多くのケーブルカー、登山列車、エレベーターで結ばれていて、市民の足として大活躍しています。丘の上に上ると、海岸線に広がる絶景が望め、夜景も素晴らしく美しいです。山の向こうには遠くにアルプスの壮麗な山々がそびえ、市内の旧市街には数多くの宮殿が現存し、特にガリバルディ通りには白の宮殿、赤の宮殿等、12もの宮殿が建ち並び、イタリアで最も美しい通りといわれています。

 

ソプラーナ門

 

 有名な音楽家としては、天才ヴァイオリニストとして知られるニコロ・パガニーニ(1792-1840)が生まれた町です。偉大な歌手も多く輩出していて、ベルカントのソプラノとして一世を風靡したレナータ・テバルディ(1934-)がジェノヴァ近郊のサヴォナ生まれです。他にも最近まで大活躍していたソプラノのダニエラ・デッシー(1957-2016)、名バリトンのジュゼッペ・タッデイ(1916-2010)がジェノヴァ生まれです。

 

以前も申し上げましたが、ヴェルディ(1813-1901)は冬の間、約40年にわたり、暖かい地中海性気候のこの地で過ごすのが習慣になっていました。彼の「シモン・ボッカネグラ」は、14世紀のジェノヴァが舞台で、実在した平民提督のボッカネグラが主人公のオペラです。

 

ジェノヴァのオペラハウスは、カルロ・フェリーチェ劇場です。この劇場を建てたサルデーニャ島の国王カルロ・フェリーチェの名前がそのまま使われています。

 

カルロ・フェリーチェ劇場

 

1828年4月7日、若干26歳のヴィンチェンツォ・ベッリーニ(1801-1835)の第2作「ビアンカとフェルナンド」の初演でオープンしました。名指揮者アンジェロ・マリアーニが20年以上音楽監督をつとめ、若いアルトゥーロ・トスカニーニもこの劇場の指揮をして名声を高めました。

 

1892年にはコロンブスのアメリカ大陸発見400年を記念して作曲されたアルベルト・フランケッティの”クリストフォロ・コロンボ”が初演されました。その後、シュトラウス、ワーグナー等、ドイツの作品も多くとりあげられました。しかし、1943年に第2次世界大戦の砲撃によって破壊されてしまい、ロココ調の美しい客席はなくなってしまいました。

 

その後、1991年10月20日にヴェルディの”トロヴァトーレ”で再開場しました。 新しい劇場は、客席は横に広く、黒のベースに赤のサテンが張ってあるシートに、レンガ模様でグレーの壁が、近代的な照明の天井と良くマッチしています。グレーの横の壁は、左右に4階建てレンガ造りの家の外壁をモチーフとし、その2階と3階部分には白と茶色の小さなパルコ(ボックス席)が左右に2つずつあって、それぞれ3席、5席というかわいいパルコになっています。)

 

正面入口

舞台と客席

カーテンコール

 

サイドのうしろのほうは木で作られたバルコニーがあり、縦に1列のサイド席となっています。また、プラテア(平土間)は後方に行くにつれ、段差をつけてあるので、どの席に座っていても客席がよく見えます。

 

プラテアの最後方には4つのパルコがあって、さらに2階席には、木製の手すりがおしゃれなガレリア(天井桟敷席)が440席ほどありますが、こちらもたいへん見やすい席で好評です。

 

ホワイエ、クロークは新しいこともあってピカピカでグレーの大理石がシンプルに映えています。もっとも印象的なのは、高さ30mからなるガラス円筒のオブジェです。ホワイエ後方から劇場内を貫抜き、まるで太陽の光に手を伸ばさんばかりにそびえたつ8角錐の尖塔は、劇場全体に非常に斬新な印象を与えています。

 

最後にもう1つ。緑色が鮮やかなペスト・ジェノヴェーゼと呼ばれるバジリコの調味料は、
ジェノヴァ風という意味です。

 

執筆:上月光



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