第18回フィレンツェその3 「5月音楽祭、3つの劇場、フィレンツェが舞台のオペラ、映画」
第18回 ヨーロッパ音楽都市巡り
フィレンツェ その3
「5月音楽祭、3つの劇場、フィレンツェが舞台のオペラ、映画」
フィレンツェには、1年を通じての常設のオペラハウスはありませんが、フィレンツェ5月音楽祭(Maggio Musicale Fiorentino)が5月の音楽祭を中心に、ほぼ1年を通じてオペラを上演しています。また、オペラだけでなく、非常に高いレヴェルのオーケストラのコンサートや、バレエ、ピアノのコンサートなども頻繁に行われています。この音楽祭は、指揮者のヴィットリオ・グイ(1885-1975)が1933年に創設し、1985年からは巨匠ズビン・メータ(1936-)が長期間に渡り首席指揮者として発展させ、2019年からはファビオ・ルイージ(1959-)が音楽監督となりました。
150年以上に渡りテアトロ・コムナーレがメインのオペラハウスでした。この劇場は、1852年にポリテアーマ・フィオレンティーナ・ヴィットーリオ・エマニュエーレ2世劇場という野外劇場として建てられ、1883年に屋根が取り付けられました。戦争で大破されたのち、1935~37年と1961年に全面的な改装が施され、現在の姿となっています。

テアトロ・コムナーレ
外観はそっけないもののホワイエや客席は豪華で、広い空間を持っています。プラテアの周りに1層のパルコ、その上に2層のガレリアという造りは、イタリアのオペラハウスにあっては馬蹄形ではなく、近代的な作りになっています。また、音響がとても良いことでも知られていて、オケピットの中で、指揮者の位置が通常の劇場よりもだいぶ高いところにあるので、客席から指揮者が良く見えるのも特徴です。

テアトロ・コムナーレ舞台
ドゥオーモのすぐ近くに建つペルゴラ劇場は、1656年以来の歴史を誇り、平土間(プラテア)と3層のボックス席(パルコ)とその上に天井桟敷(ガレリア)の1,000席の典型的な馬蹄形の劇場です。ヴェルディの「マクベス」が初演された劇場としても有名ですが、現在は演劇の会場として使われています。

ペルゴラ劇場

ペルゴラ劇場2
最後に新オペラ座です。2011年に仮オープンしたものの工事半ばで無理に開場したため認可が下りず再び工事に入り、2014年にようやく本開場したオペラハウスです。1,800席収容の近代的なアレーナ型です。中央駅(サンタ・マリア・ノヴェッラ駅)から1㎞で、トラムに乗れば5分で行くことができます。

新オペラ座
フィレンツェを舞台にしたオペラも幾つかありますが、特に有名なものは、フィレンツェ近隣のルッカで生まれたジャコモ・プッチーニ(1858-1924)の1幕オペラ「ジャンニ・スキッキ」です。このオペラは彼の生涯で唯一のブッファ(喜歌劇)です。リヌッチョはアリアで「花咲き匂う樹木のようなフィレンツェ、シニョーリア広場に枝を張り…」と歌い、ラウレッタはかの有名な「私のお父様」のアリアで「ヴェッキオ橋からアルノ川に身を投げるわ…」と歌っています。
「ジャンニ・スキッキ」は、1幕オペラのため、同じ1幕のオペラと1夜で連続上演されることが多いですが、同じフィレンツェを舞台とする「フィレンツェの悲劇」がよく選ばれます。こちらはオスカー・ワイルド原作で、ユダヤ系オーストリア人作曲家ツェムリンスキー(1871-1942)の悲劇です。
もう1つ、ルネッサンスの実在のフィレンツェの詩人ボッカッチョの「デカメロン」を原作とするスッペ(1819-1895)のオペレッタ「ボッカチオ」も有名です。
フィレンツェが舞台の映画といえば、ダン・ブラウンの3部作の3作目、「インフェルノ」が印象深いです。トム・ハンクスがフィレンツェの街を駆け回ります。あとは邦画で「冷静と情熱のあいだ」もフィレンツェが舞台です。
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